こんにちは!
好評いただいている眼科診療報酬シリーズ、8回目となります。
今回のD261~D267は我々視能訓練士を含め、眼科の算定検査の主検査といっても過言ではない視力検査、その他眼科検査室・明室などの眼科における検査室で一般の方にも馴染みの深い検査の数々の診療報酬を紹介していきます。
それでは、サクサクと進めていきます。
*〇から始まる文章は参考文献からの引用です。
D261 屈折検査
1 6歳未満の場合 69点
2 1以外の場合 69点
屈折検査は注意点・通達事項が多いので、まず以下に参考文献からの抜粋します。
通達抜粋
〇注 1について、弱視又は不同視と診断された患者に対して、眼鏡処方箋の交付を行わずに矯正視力検査を実施した場合には、小児矯正視力加算として、35点を所定点数に加算する。この場合において、区分D263に掲げる矯正視力検査は算定しない。
〇(1)屈折検査は、検眼レンズ等による自覚的屈折検定法又は検影法、レフラクトメーターによる他覚的屈折検定法をいい、両眼若しくは片眼又は検査方法の種類にかかわらず、所定点数により算定し、裸眼視力検査のみでは算定できない。
〇(2)散瞳剤又は調節麻痺剤を使用してその前後の屈折変化を検査した場合には、前後各1回を限度として所定点数を算定する。
〇(3)屈折検査とD263矯正視力検査を併施した場合は、屈折異常の疑いがあるとして初めて検査を行った場合又は眼鏡処方箋を交付した場合に限り併せて算定できる。ただし、本区分「1」については、弱視又は不同視が疑われる場合に限り、3月に1回(散瞳剤又は調節麻痺剤を使用してその前後の屈折の変化を検査した場合には、前後各1回)に限り、D263矯正視力検査を併せて算定できる。
〇(4)「注」に規定する加算は、「1」について、弱視又は不同視と診断された患者に対して、眼鏡処方箋の交付を行わずに矯正視力検査をを実施した場合に、3月に1回(散瞳剤又は調節麻痺剤を使用してその前後の屈折の変化を検査した場合には、前後各1回)に限り、所定点数に加算する。
補足・解釈・算定例
抜粋した通達文の番号(1)~(4)について補足と解釈、算定例をまとめます。
(1)D261屈折検査は、自覚的屈折検査(レンズ交換法等)・他覚的屈折検査(検影法、レフラクトメータ等)により、患者さんの屈折値を測定した場合に算定できます。検査は片眼であっても両眼であっても所定点数69点に変化はありません。
6歳未満とそれ以外で点数は同じですが、弱視等の取り扱いや小児加算が関係してくるため分かれているという解釈で良いと考えられます。眼科専用の電子カルテの場合、年齢区分により自動で切り替わることもあります。
裸眼視力測定のみの場合は算定できませんが、裸眼視力測定前にレフラクトメータで屈折検査を行っていた場合はレフ値0.00Dであっても算定できます。屈折に関する病名が必要です。(近視性乱視・遠視性乱視・不同視など)
(2)散瞳剤(トロピカミド・フェニレフリン)又は調節麻痺剤(アトロピン・シクロペントレート)を使用した屈折検査は、薬剤使用前後(薬剤負荷前後とも記される)として使用前1回・使用後1回として計2回分の屈折検査料が算定できます。
算定例1:薬剤負荷前後で屈折検査を実施した。
D261屈折検査(薬剤使用前後) 69点×2
*電子カルテのシステムによっては屈折検査(薬剤使用前後)と入力するだけで自動で×2になるものもあります。
(3)D261屈折検査69点とD263矯正視力検査69点は初診時と再診時の眼鏡処方箋を交付した場合に併算(同時算定)できます。
6歳未満の場合は、弱視・不同視が疑われる場合に限って3カ月に1度同時算定できます。弱視・不同視が確定病名となっている場合はD261屈折検査のみ算定します。また、(2)の薬剤使用前後はそのまま適応されます。
算定例2:再診、前回D263矯正視力算定から3カ月以上経過、弱視・不同視疑い(6歳未満)。
D261屈折検査(6歳未満)69点+D263矯正視力検査(1以外)69点=138点
算定例3:例2と同症例、調節麻痺剤による屈折検査も実施。
D261屈折検査(6歳未満・薬剤使用前後)69点×2+D263矯正視力検査(1以外)69点=207点
(4)通達文抜粋にある注(小児矯正視力加算)について、6歳未満の屈折検査において、弱視又は不同視と診断されている場合に、眼鏡処方箋の交付を伴わない矯正視力検査を行った場合に、小児視力検査加算35点を加算して算定できます。この加算は、3カ月に1度算定が可能で、散瞳剤又は調節麻痺剤を使用してその前後の屈折の変化を検査した場合には前後各1回にそれぞれ加算できます。
(4)は大変複雑ですが、算定例にまとめます。
まず、6歳未満で屈折検査に併せて矯正視力検査をした時に初診時ではD263矯正視力検査を算定している場合は矯正視力検査69点を屈折検査69点と併算します。
弱視・不同視の診断がついている症例の再診時に算定することとなります。さらに眼鏡処方箋の交付がない場合です。
算定例4:6歳未満・弱視・初診日4/1、5/1再診時に矯正視力検査を行った。
4/1初診日→D261屈折検査(6歳未満)69点+D263矯正視力検査(1以外)69点=138点
5/1再診時→D261屈折検査(6歳未満)69点+小児矯正視力加算35点=104点
算定例5:例4の患者さんがその後もひと月ごとに定期受診をして毎回屈折検査と矯正視力検査をしている。
6/1再診時→D261屈折検査(6歳未満)69点のみ、小児加算不可
7/1再診時→D261屈折検査(6歳未満)69点のみ、小児加算不可
8/1再診時→D261屈折検査(6歳未満)69点+小児矯正視力加算35点=104点(3カ月ごとの算定は可能)
算定例6:例5の患者さんが8/1再診時に調節麻痺剤を使用した検査行う前に矯正視力検査を行った。
8/1再診→D261屈折検査(薬剤使用前後)69点×2+小児矯正視力加算35点=173点
算定例7:例6に加えて調節麻痺後にも矯正視力検査を行った。
8/1再診→D261屈折検査(薬剤使用前後)69点×2+小児矯正視力加算35点(薬剤使用前)=173点、算定点数は例6と同じです。
追記・注意:所管地域によっては屈折検査は月を跨いでの連続算定はできない場合もあり、屈折検査と矯正視力検査と交互に、もしくは屈折検査は3カ月ごと、それ以外は矯正視力検査(1以外)で算定している場合もあります。
6歳未満の診断がついた弱視・不同視の算定は大変複雑です。ここにD263矯正視力検査の「1.眼鏡処方箋の交付が伴うもの」と「2.それ以外のもの」を含めるとさらに複雑さが増しますのでD263矯正視力検査の項目解説前ですが以下のようにまとめます。
小括 6歳未満、弱視・不同視確定例D261屈折検査・D263矯正視力検査
・6歳未満、弱視・不同視
・三月に1回、前回の小児矯正視力加算日もしくは屈折検査・矯正視力検査の同時算定日の要記載。
A.初診時
①眼鏡処方する場合
屈折(6歳未満)69点+矯正視力(眼鏡処方)69点
②眼鏡処方しない場合
屈折(6歳未満)69+矯正視力(1以外)69点
③眼鏡処方せず調節麻痺剤使用、前後の屈折変化を検査した場合
屈折(6歳未満)(薬剤使用前後)138点+矯正視力(1以外)69点
B.再診時
④眼鏡処方する場合
屈折(6歳未満)69点+矯正視力(眼鏡処方)69点
⑤眼鏡処方しない場合
屈折(6歳未満)69点+小児矯正視力加算35点
⑥眼鏡処方せず調節麻痺剤使用、前後の屈折変化を検査した場合
・薬剤使用前後のいずれかに矯正視力検査を併せて行った場合
屈折(6歳未満)(薬剤使用前後)138点+小児矯正視力加算35点
・薬剤使用前後に矯正視力検査を併せて行った場合
屈折(6歳未満)(薬剤使用前後)138点+小児矯正視力加算35点
以上です。同じ言葉が何度も繰り返し出てくるため間違い探しのような状態になっていますが、大切な部分ですので繰り返しになっている部分もありますが書かせてもらいました。
D262 調節検査 70点
〇調節検査は、近点計等による調節力の測定をいうものであり、両眼若しくは片眼又は検査方法(調節力検査及び調節時間検査等を含む)の種類も関わらず算定する。
〇負荷調節検査を行った場合であって、負荷の前後に調節検査を行った場合には所定点数の100分の200の点数を限度として算定する。
解釈・算定例
近点計等:石原式近点計(石原・大塚式近点測定器、HANDAYA)やアコモドメーター(KOWA社)やD’ACOMO(ワック社)、ARK-1s(NIDEK社)、TriIRIS(浜松ホトニクス社)

「調節」に関わる検査の場合は算定できます。
「老視」や「調節緊張」の疑いや診断例において、調節検査の算定が可能となるケースもあります。遠見の屈折矯正値に調節を加味した近見加入レンズを入れて近見の屈折検査を行った場合に、その結果当該患者の調節力が判断できることとなるとの考え方のようです。
D263 矯正視力検査
1 眼鏡処方箋の交付を行う場合 69点
2 1以外の場合 69点
〇眼鏡を処方する前後のレンズメータによる眼鏡検査は、矯正視力検査に含む。
補足・解釈
所持眼鏡の視力検査はD263矯正視力検査(1以外の場合)として算定できます。
1と2を同時に算定することはできません。
初診時には眼鏡処方箋の交付が伴わなくても屈折検査と併せて「1以外の場合」で算定が可能です。再診時の視力検査であれば屈折検査もしくは矯正視力検査のどちらか一方を算定するため併算はできませんが、眼鏡処方箋の交付を行う場合であれば併算が可能となります。
算定例については屈折検査の項目の解説もあわせてお読みください。
追記・注意:所管地域によっては屈折検査は月を跨いでの連続算定はできない場合もあり、屈折検査と矯正視力検査と交互に、もしくは屈折検査は3カ月ごと、それ以外は矯正視力検査(1以外)で算定している場合もあります。
D263-2 コントラスト感度検査 207点
〇コントラスト感度検査は、空間周波数特性(MTF)を用いた視機能検査をいい、水晶体混濁があるにも関わらず矯正視力が良好な白内障患者であって、K282水晶体再建術の手術適応の判断に必要な場合に、当該手術の前後においてそれぞれ1回に限り算定する。

ニコンソリューションズCSV-1000E(HPより引用)
原則として術前矯正視力「(0.7)以上」のコメント詳記が必要になります。
D264 精密眼圧検査 82点
〇精密眼圧測定は、ノンコンタクトトノメーター若しくはアプラネーショントノメーターを使用する場合又はディファレンシャル・トノメーターにより眼内圧を測定する場合(眼球壁の硬性測定検査を行った場合を含む)をいい、検査の種類を問わず所定点数により算定する。
負荷測定加算 55点
〇水分を多量に摂取させたり、薬剤の注射、点眼若しくは、暗室試験等の負荷により眼圧の変化をみた場合又は眼圧計等を使用して前房水の流出率、産出率を測定した場合に、検査の種類、負荷回数にかかわらず、1回のみ所定点数により算定する。

所見に「閉塞隅角」、病名に「閉塞隅角緑内障」など、診断に検査の必要性があったかなど査定されることがあります。
疾患によっては40歳未満の場合、連続算定は査定される場合があります。
40歳未満でステロイド点眼・軟膏が処方されている場合はコメント詳記することで算定が可能になります。
D265 角膜曲率半径計測 84点
角膜曲率半径計測は初診時・再診での眼鏡処方箋発行時・白内障術前後各1回・白内障術後3カ月間で月が変わった再診時に月に1回算定ができます。(所管地域により違いあり)
一般の方へ
角膜曲率半径計測は昨今ではオートレフケラトメータで検査が行われることが多いです。
オートレフケラトメータは眼科の入り口検査である屈折検査のオートレフラクトメータ(覗き込むと気球や家などが見える)とケラトメータを合わせた機械です。


D265-2 角膜形状解析検査 105点
〇注 角膜形状解析検査は、患者1人につき月1回に限り算定する。ただし、当該検査と同一月ないに行こなった区分番号D265に掲げる角膜曲率半径計測は所定の点数に含まれるものとする。
〇角膜形状解析検査は、初期円錐角膜などの角膜変形患者、角膜移植後の患者又は高度角膜乱視(2D以上)を伴う白内障患者の手術前後に行われた場合に限り算定する。
〇角膜移植後の患者については2カ月に1回を限度として算定し、高度角膜乱視を伴う白内障患者については手術の前後各1回に限り算定する。
〇角膜変形患者に対して行われる場合は、コンタクト処方に伴う場合を除く。

補足・解釈
角膜曲率半径計測と同時には算定できません。
算定には角膜病名が必要です。角膜病名がつかない場合はコメント詳記(例:「強度角膜乱視のため角膜形状解析検査を行った」など)が必要になります。
D266 光覚検査 42点
アダプトメータ等による光覚検査をいいます。

D267 色覚検査
1 アノマロスコープ又は色相配列検査を行った場合 70点
2 1以外の場合 48点
〇「2」の場合には、ランタンテスト及び定量的色盲表検査が含まれるが、色覚検査表による単なるスクリーニング検査は算定しない。
補足・解釈
学校の健診で用いられる色覚検査表は「石原 色覚表Ⅱコンサイス版14表」のような簡易のものを指します。眼科では国際版38表が用いられることが多く、より詳しく検査をすることとなります。
「色覚検査表による単なるスクリーニング検査は算定しない」と通達事項に記載されていますが、石原式国際版38表で算定できるというケースがあります。電子カルテでは石原式色覚検査表の結果を送信すると「1以外」で算定ができるので広義の解釈で算定可能となっていると考えます。
色相配列検査には100hue testやパネルD-15と呼ばれる検査が挙げられます。

まとめ
今回は検査料D261からD267までをまとめました。
屈折検査や矯正視力検査は算定がとても複雑なので私も慣れるまでは何度も解説本を読みました。
全国各地の視能訓練士さんや眼科医の先生方から算定の可否について話を聞く限り、今回の項目は解釈の分かれている部分も多くあるようです。
このシリーズ開始から申し上げているように、お住まいの地域によって違う場合があるので注意が必要です。
光覚検査は正直学生の時以来行ったことがありません。今回記事にするのに調べなおした際に「こんな機械だった」と思い出したくらいです。
かなり専門的な内容で一般の方が読んでどうか、という部分もあります。読み直して、また今後修正を加えていくことになるかと考えています。
参考・引用:保険診療便覧-点数表とその解説-(医学通信社協力編集)
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